ミネルバ会計週報『税金よもやま話 肉用牛は税金なし!?』2025.02.17
2025/02/17
牛肉の自給率はここのところ横ばい
ステーキ、すき焼き、牛丼にハンバーグ。牛肉が大好き、という方も多いのではないでしょうか。そんな牛肉の国内の自給率は平成に入ったあたりから横ばい状態が続いており、農畜産業振興機構のデータによると、令和3年度の牛肉自給率は38%となっているとのことです。
そんな牛肉ですが、肉用牛を売却した所得について、条件はあるものの、所得税や住民税が課されないケースがあるのをご存じでしょうか?
肉用牛売却所得の課税の特例措置
この特例は農業を営む個人及び農地所有適格法人が肉用牛を売却した所得について、所得税・住民税共に免税になるものです。
農業を営む個人は「米・麦・野菜、その他作物(飼料用作物も含む)や、果樹の栽培又は養蚕の事業を併せて行っている」というのが条件です。
対象の牛にも要件があり、特例対象になるのは肉用種か、肉用仕向けの乳用種で、種雄牛や、肉用牛の子取り用(子供を産ませる)雌牛で固定資産に該当する牛は除外されます。また、100万円以上で売却された肉用牛で高等登録牛ではない牛や、80万円以上で売却された交雑種の牛、50万円以上で売却された乳用種の牛も非対象となっています。要は高値で売れたものはだめです。
特例対象の売却の場所も定められており、認定されている市場でなければなりませんし、2か月以上飼養期間がなければいけません(自生産の子牛を除く)。また、免税になるのは1事業年当たり1,500頭までです。
肉用牛飼養戸数は年々減少中
制限は多いものの、丸々免税という大胆な措置の背景には、肉用牛生産農家の経営体質を強化し、国産牛肉の安定的な供給を目指す国の姿勢が伺えます。
全国肉用牛振興基金協会のレポートでは、令和4年の肉用牛飼養戸数は約40,400戸で、昭和50年から比べると1/10になっています。大規模化で飼養頭数については近年増加減少を繰り返している横ばい状態をなんとか保っています。肉用牛業界では、飼料・家畜・堆肥という循環型サイクルで環境負荷軽減にも着手しています。
この税の特例措置が、経営の厳しい畜産業者の一助になっていることを願っております。